映画『凶悪』2013年 白石和彌監督作品 @Amazonプライムビデオ

実際の事件を元にした映画らしい。原作もいずれ読んでみようと思う。

 

実際、こういう人たちっているんだろうな。

殺人なんて屁でもない人たち。

ジュンジみたいに、平気で人を殺すけどなぜか義兄弟とかへの義理人情だけは大切にしてる、倫理観のバランスが狂っているやつ。

金のための殺人だけど、殺すことに快楽も覚えている木村のような鬼畜。

借金のため保険金殺人を依頼する家族。

 

目を覆いたくなるシーンの連続だが見ずにいられない。

 

事件の全貌と

それを追う記者の私生活のシーンとが並走する。

記者の私生活もめちゃくちゃだ。

取材に没頭し、認知症の自分の母親を妻に任せきりで、施設に預けようともしない。妻の懇願のような相談にも応じない。

この記者だって家庭内において「凶悪」だろう、と言っている気がした。

 

正義感のある熱い記者が主人公な訳だが

こういう記者さんが実際にいるからこうした事件が掘り起こされたりするんだな。

情熱がないと取材も交渉もできないよな。

社会人になってこうした純真さを持ち続けるというのは本当にすごいことだと思う。

それと表裏一体で家庭が犠牲になってしまうのは、悲しいけど高い確率で起こることだろう。

 

木村俊介『「調べる」論 しつこさで壁を破った20人』 (NHK出版新書)にあった、記者さんの話を思い出した。自分にしか書けない記事を書いて、読者に喜ばれた時が何よりもうれしいと。だけど生活リズムは家庭人が送るようなものではないらしく、その人も家族と向き合えなくて、離婚した、と。深く悲しんでいる様子だった。仕事の喜びと家族への後悔の念を読むと、その人も、中年以上のお年なのに、常人では持ち続けるのが難しい純真さを持っておられることが伝わってきた。

余談な持論だけど、私の知人を思い浮かべても、仕事に情熱を持ち続ける人は大抵ピュアな一面を持っている。

 

映像はリアルで、伝えたいことをよく伝えていると思う。

 

ピエール瀧の演技は

ジュンジのような人間のどうしようもなさと幼さ、愚かさ、汚さをよく表しているのではないかと思う。

そして、「瀧の顔のでかさ」がこの映画のもう一つの見どころだ(ほめてる)。